星をながめて

「ちょっともったいないですね」
こんなに綺麗な星空の下、二人だけ。
「まあな」
理由はわかってるけど、それでも。
もっと多くの人が、この空を見られたらな、と思う。

「都市船に引っ越したら、時々はどうしても水上に上がるから…。
でも、主に昼間の予定だし」
うーん、どうしたものか。
少しずつ慣れていって、地上で星を見るのは、さらにその後かな。
先は長い上に、まだ都市船への引っ越しという第一歩の準備中。
今年は誰もいなくても。
来年、再来年。
ほんの少しずつでいいから、人が増えたらと思う。

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少し、海岸の方へ移動した。
潮騒の心地よさに、足を止めて目を閉じる。
「夜の海も、いいですね」
「ああ」
目を開けると、空に星、海にも星。
「星が二倍で得した気分になります」
「そういうものか」
少し笑ってる気配。
「そういうものです」
玄ノ丈さんに微笑みかける。

織姫と彦星は、どれだっけ。
小学生の頃学んだ記憶を思い出す。
「夏の大三角で、よかったですよね?」
「なんだそれは?」
覚えてない人発見。
笑いながら説明をはじめる、ちゃんと覚えてるかな。
「ええと、織姫のこと座ベガ、彦星のわし座アルタイル。
あと、はくちょう座のデネブだったかな。
この3つを、夏の大三角って呼ぶんです」
星々を指さしながら説明する。
「冬や春にもあるんだけど」
「そうなのか?」
えーと…思い出せ私。
「冬は、オリオン座のベテルギウス、おおいぬ座のシリウス、
こいぬ座のプロキオンだったかな。
夏のとは違って、綺麗に正三角形になってるからわかりやすいんです」
そういうものかと言って空をながめてるのをいいことに、春の説明はやめとく。
実際、忘れちゃってるし。
「冬の大三角形は、オリオンとその猟犬たちって形なんですよね」
「夏はどういう関係なんだ?」
「夏は……あれ?」
織姫と彦星といえば、関係あるんだけど。
こと座ってオルフェウスの琴よね。
白鳥はその魂をアポロンが天上へ上げたものだから、この2つは関係あるんだけど。
わしはゼウスの化身だし…

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気がつくと、玄ノ丈さんが小さく笑ってる。
わーん、ぐるんぐるんになった原因は誰だと。
「織姫と彦星で考えると、白鳥じゃなくってかささぎなんですよね」
「そうだな」
年に1度だけ、かささぎの橋によって会える恋人達、か。
あまり他人事には思えない。
玄ノ丈さんをちらりと見て、少しだけため息。
苦笑と共に頭をなでられると、仕方ないさ、と言われてる気分になる。
わかってるつもりだけど。でも。
うまく言葉にできなくって、玄ノ丈さんに寄り添う。
微笑んでいる気配。

今はまだ、仕方ないけれど。
そうじゃない日が来ることを、星々に願う。
玄ノ丈さんのそばにいられますように。
そしてもうひとつ。
玄ノ丈さんが無事でいられますように。

そういえば。
「笹飾り作るの忘れてました」
「今からでもやるか?」
うーん。
「このあたり笹はあった記憶が…」
「探しがてら散歩だ」
「はい」
そっと、腕をとる。
砂の上に、二人並んだ足跡を残して。
来年またきます、見えないサインを砂に刻む。